日本の隣国にあり、「きってもきれない仲」と言われる中国の顔がもうすぐ変わります。
胡 錦濤(こきんとう)国家主席から習近平(しゅうきんぺい)氏へ。
先日、アメリカの選挙の事について書きましたが「2012年の世界の顔ぶれの変化」のもう一つのおおきな流れ、中国のトップの交代です。
アメリカではオバマ大統領がもうあと4年任期に挑戦できますが、中国では法律により胡 錦濤氏の交代は決められています。
中国の首脳の交代は他の国と同等ではありません。
実質は国民の選挙で選ばれるのではなく、一党支配といわれる「中国共産党」の中の選挙で選ばれます。
中国は憲法にも「中国は中国共産党が引っ張っていく」と一党独裁を、暗に記してあると言う、めずらしい国家。
中国共産党のトップである「総書記」という肩書を持った人が「中国の代表となる国家主席」となるのが近年の慣例になっています。
先に「中国共産党のトップ」を選んでから、その人が「国家主席」に追認されているという事です。
中国では「共産党の中の地位」は「国の地位」より高い、というのが常識です。
中国共産党には地方部局もあり、上海や北京はもちろん、国営の企業などにも「共産党員」は派遣されます。
たとえば中国では「上海市長」より「上海市・共産党書記」の方が権力がある、という事です。
おなじように「広東省長」より「広東省・共産党書記」のほうが強い。
国営企業になると「国営○○会社社長」より「国営○○会社・党委員会書記」のほうが強い、という感じです。
という事は、もし習近平氏が「共産党総書記」について「国家主席」につかなかった場合があるとしても、「総書記である限り、国家主席より権力が強い」と思った方が良いです。
ここで注意すべきは「書記」というのは、日本の学校で選ばれる「黒板に字を書く人」や「記録する人」という使い方ではありません。
いわゆる共産主義や社会主義の中では「トップ」と考えて良いです。
しかし、こと国家になるとたった一つの例外があります。
国は「軍」を持っている、という事です。
中国の権力は3大権力と呼ばれ「党」「国家」「軍」と呼ばれます。
それぞれ「党のトップ」「国家のトップ」「軍のトップ」がいるのですが、先ほど説明したように「党のトップ」は「国家のトップ」より強い、と言いましたが、さらに「党のトップ」と同じくらい強いのが「軍のトップ」です。
もちろん「軍のトップ」は形式的には目立ちませんが、歴史をひも解くと「権力者がいつも恐れるのは軍によるクーデター」です。
「軍を抑えた者が、にらみを効かせられる」というのが、中国の慣例です。
現国家主席の胡 錦濤(こきんとう)氏は、現在「党のトップ」「国のトップ」「軍のトップ」についていますが、法律の規定により、まず「党のトップ」である「共産党総書記」を習近平氏に明け渡します。
その後、追認するように「国のトップ」である国家主席を明け渡します。
本日のニュースによると胡 錦濤(こきんとう)氏は、「軍のトップ」である「中央軍事委員会委員長」の座を明け渡したくないようなのです。
これは暗に「軍のトップはとても権力が強いですよ」を表わしています。
もちろん強硬な反対にあっているらしく、「この地位も手放す」と言われていますが、そうすると一気に権力がダウンします。
中国は日本とはまた違った政治体制。
まず「党のトップ」が変わるのを見て、さいごに「スムーズに軍のトップが変わるか?」を注目して見てみてるとニュースの裏側が分かります。